ふたりの彼女と、この出来事。 (新版)
「そうなの?」

広海君がパッと明るくミライに聞いてる。

「うん、少しなら」

そんなの初耳だって!

(オイオイ本当なのかよ?)

いやミライ、君まで乗っかることはないんだよ?そんな体でムリするなよ?

「じゃ、どこ行こっか♪」

ほら、すっかりその気になってるじゃないか~。

(大丈夫なのか?…)

と、教授がまた一つ咳をした。

「そうだ、私が知ってるちょうど良いテーブルバーがある。この時間から開いていて、渋いマスターが一人でやっている落ち着いた雰囲気の店だ。酒も料理も本格的で、女性も入りやすい。そこなら大丈夫だろう。ちょっと待ってくれ。もらった名刺に地図が載ってたんだが、…これだ。ダンロという店だよ」

立ち上がって、内ポケットから取り出した札入れから名刺を抜いて渡してくる教授。

ずいぶん準備がいいですね…。

「じゃあ私はこれで失礼するよ。後は三人でよろしくやってくれ」

と、教授が立ち去ろうとしてる。

「帰るんですか?」

ここで放り出すんですか?

「ああそうだ。頼んだぞ。じゃあな」

ポンと僕の肩を叩いて出て行く教授。

頼んだぞって…。

(これは命令だって事ですか…)

さっさと廊下へ出て行ってしまったし。

マッタク。

この教授は面倒事ばかり押しつけてくれるよ。

「じゃ先生、行きましょう~♪」

にこやかに声を上げた広海君に腕を取られて、引っ張られるように実験室を出る。

ついて来るミライに微笑まれてる。

(う~ん…)

どうやってそれが決まるのか知らないけど、

僕はつくづく振り回される運命にあるみたいだよ。ハァ…。
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