ふたりの彼女と、この出来事。 (新版)
(どうやら大丈夫そうだな…)

横でグラスを傾けるミライは受け答えもしっかりしている。

(…取り越し苦労だったか)

と、パスタも平らげていい酔い加減になってきた時、広海君が横から聞いてきた。

「ねぇセンセー、先生ってさぁ~、ミライさんに気があるんでしょぉ?」

ええっ?

「何を言い出すんだよ、突然」

目を見開いて返したが、広海君は負けなかった。

「だってセンセーさぁ、さっきからず~っとミライさんの事ばっかり気にしてるみたいだしぃ~」

とスッと目線をミライに向ける広海君。

「そりゃまあ、」

こっちはいつミライが倒れやしないかと気に掛けているんだから。

(あっ、)

頷き返した後で、広海君がニヤけているのに気づいた。

「あ~センセー認めるんだ。やっぱりね。こういうお店って口説きやすいもんね~」

と、広海君がグッと顔を近づけてきた。

「ねえ先生気付いてた?さっきから先生、ミライさんのコト呼び捨てで呼んでるわよ」

シマッタ!

「それは私がお願いしたの」

って、口を挟まなくていいってミライ!

「そうなんだ!なんだぁ~、ミライさんも先生に気を許してるんじゃない♪」

アイタタタ。

みすみすツッコミどころ満載のエサを与えてしまったじゃないか。

「いやいや、そうじゃないよ、僕はさ、ミライの体が心配なだけでさ、」

慌てて否定してみたけど広海君には効かない。
< 45 / 321 >

この作品をシェア

pagetop