ふたりの彼女と、この出来事。 (新版)
「そんな風に言ったらミライさんがかわいそうじゃなぁい。恥ずかしがらないでぇ、正直に言ってあげなさいよぉ~センセー。ほらほらぁ。」

言った傍からツッ込んでくるよ。

「いやいや、違うんだって」

「照れなくてもいいじゃない。少しは気になってるんでしょ?」

ん、そりゃあまあ…。

「ねえミライさん、センセーいい人だから誤解しないで付き合ってあげてねぇ」

オイオイ先走るなよ広海君。

「ねぇ、センセー」

と、パッと僕に視線を移したかと思うと、じーっと見つめてきた。

「…大事にしてあげなきゃダメよ、先生」

それは、ミライが病気を抱えてるからって含みか?

お~い、首を傾げて何考えてる?

勝手に頭ん中で話を膨らませるんじゃないぞ~。

「ウフ~ッ♪」

って何だよ、急にニヤけたりして。

「今夜は二人の素敵な夜になるのかなぁ~、センセッ♪」

オイッ、勝手に話を盛り上げるなっ。

「何言うんだよ、違うんだっ、その、…」

どう答えよう。

少し気になる所があるのは確かだし。

言葉に詰まって宙を見上げていると、広海君がパンと肩を叩いてきた。

「心配しないでよぉ先生。ちゃんとお邪魔虫は消えるから。じゃあ後はガンバってねセンセ。ちゃんとおごりにしといて。ごちそうさまー」

と念を押す事は忘れずにバタバタと店から出て行く広海君。

「おい待てよ、おいっ、…」

呼び掛ける声も空しく掻き消え、すっかり思い込んだままの広海君がドアの外へと消えて行く。

「…」
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