ふたりの彼女と、この出来事。 (新版)
「そろそろお昼ね~。ねぇミライさん、」

ミライに振り向く広海君。

(ム…)

警戒警報発令。

「ミライさんってどこの出身?」

なんだ、普通の質問だった。

手を止めて振り向くミライ。

「サンタクララ」

ん?それどこ?

「どこにあるの?そのサンタクララって」

広海君も首を傾げてる。

「カリフォルニアのシリコンバレー。大きくはない街だけど、世界的なハイテク企業の本社もあるの。そこでお父さんが働いてたから」

「へえ」

つられて僕も頷いた。

(そういえばクワンも西海岸って言ってたっけ)

ああ見えてけっこうワールドワイドな研究所なんだな。

と、昼休みを告げるチャイムが聞こえてきた。

「ねぇ、ミライさんは食べられないかもしれないけど、先生も一緒に三人で学食行かない?」

と広海君が話を切り出してきた。

「えっ」

そりゃあ行くのは構わないけど、ミライも一緒はちょっと気の毒だな。

「大丈夫よ先生、安いんだからおごってよな~んて言わないから」

…言ってるじゃないか。

「ミライさん行こ行こ♪」

「うん」

「今日のランチ、好きなのだといいな~」

ニギやかに出ていく二人。

後から財布を握り締めてついて歩く。

(しょうがないなぁ)

ここはひとつ、おごってご機嫌を取っておくか。
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