ふたりの彼女と、この出来事。 (新版)
「ロボットを知らない人間が扱っても壊れないか確かめないと、耐久試験にならないよ」

ん、まあ、そうかもしれませんけど…。

「とにかく、これからのボクらの研究には君みたいな人間が必要なんだよ。ロボットの事なんか知らない、人の行動ばかり研究してるような、君みたいな人間がね」

所長が僕の肩に手を掛けてじっと見つめてくる。

「君も学者の一人だったら、研究に欠かせないんだって言われて、まさか尻込みするような男じゃないだろう?」

ウッ…。鋭いトコロを突いてくる、この所長は。

「そりゃまあそうですけど…」

頷いて返すしかないじゃないですか。

「もう契約もしちゃってるしね♪」

…トホホ。

契約書はよく読みましょう。

「…」

わかりました。

百歩譲って、その試験を引き受ける事にしましょう。でも、

「それならなんで、彼女がロボットだって事、言わないでおこうって話になったんですか」

なんで隠してたんですか。

「教授からの提案なんだよ。君を二段階で驚かせたいってね」

教授が?二段階で?

「まず第一段階は君を驚かせる事。一緒に暮らしたところでしばらくは気づかないだろうから、思いっきり驚かせてやろうってね。これは大成功かな」

ええそれはもう。

「まんまとしてヤラレましたよ」

心臓が止まるかと思いましたって。

「こんな大掛かりなドッキリを仕掛けるなんて、所長も人が悪いですよっ」

「褒め言葉と受け取っておくよ」

と所長が笑みをこぼして、続けてきた。

「で、二段階目が君の研究室の院生さ」

えっ!

「アイツですかっ?!」

ちょっと待ってくださいよっ!
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