ふたりの彼女と、この出来事。 (新版)
「広海君に、ミライが実はロボットなんだって言ったって絶対信じませんよ、『からかわないでよ』って」

きっと怒り出しますって。

「そうだね。教授から聞いた彼女の話だと、すぐには信じてくれなそうだね」

「そうなったらここに連れて来ますから、所長から説明してもらっていいですか?」

「いいや。その必要は無いよ」

と、ブンッと首を振って返してくる所長。

「えっ?なぜ?!」

なぜですか?まさかまた、面倒な事は僕に押し付けるって事ですか?

「だからさ、いいんだよ、すぐには信じてくれなくてもね」

「ハイッ?」

すぐには???

「ウン」

と、顎に手を当てて床に目線を落とす所長。

「最初は、君たち二人には正直にこの子の正体を話しておこうと思ってたんだよ」

顔を上げる所長。

「だけど、教授がこの子を見た時、筋書きが変わったんだ。人はどんな時に、自分の隣にいる存在が『人間じゃない?』と疑問を抱くのか、そしてロボットだと判った時どんな反応をするのか。それを是非調べてみたいって、教授が言い出してね」

「教授が…」

なるほど、教授らしい考え方ではある。

「教授は言ってたよ。彼女だっていつかはこの子の正体に疑問を抱くだろう。その時、この子がロボットだと言われた時、果たして彼女がそれを信じるのか信じないのか、信じた時はどうなるのか、それも含めて全て君の観察対象という訳だ、ってね」

「教授がそんな事を…」

確かに観察としては面白そうだけど…。

ハァ。

これはまた面倒臭い事になりそうだナ。
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