ふたりの彼女と、この出来事。 (新版)
「…実は、道路使用許可を取ってなかったりするんだ」

「道路使用許可?」

「日本でロボットを公道上で動かそうと思ったら、ロボット特区でもない限り、道路使用許可を取得する必要があるんだよ。警察に行ってね」

「け、警察に!」

それじゃあ、

「警察に見つかったら捕まるって事ですか?!」

「そうだよ」

本日三度目!

ちょっと所長、冗談じゃないですよ!

「何で許可を取ってないんですかっ」

所長の胸を指で突くと、逆に突き返された。

「考えてごらんよ。この子を街へ連れ出そうと思ったら、その度に警察に行って許可を取らなくちゃいけないんだよ。大学に連れて行くにも、ちょっと買い物に連れて行くにも、どこか一緒に散歩に出掛けるにも、その度にいちいち警察の許可を取らなくちゃいけない。そんなのおかしいとは思わないかい?」

う、う~ん。

「確かに道路に出る度にいちいち許可を取るなんて面倒かも…」

「これからロボットが実用化されてドンドン世の中に出て行こうって時に、そんな制度がある事自体がおかしいんだよ。だからボクは、あえて犠牲になってでも世の中に提言を投げ掛けたいんだ。こんな規則なんか要らない、ってね」

ん~、確かに分かりますよ、所長の気持ちは。

「でもバレたらどうするんですか」

僕まで捕まるじゃないですか。

「だから、バレないようにってお願いしてるんだよ。耐久試験を終えて既成事実を作ってしまえばこっちのものだからさ。君は知らなかったって事にすればいい。大丈夫、責任は全部ボクが取るよ」

そりゃ言うのは簡単ですけど。

「やっぱりマズイんじゃないですか?」

「ダイジョ~ブ。バレないって胸を張って言えるクオリティで創り上げた自信はあるよ。実際そうだっただろ?ね?」

「えぇまあ、確かに…」

不安が無いといえばウソになるけど、所長にそこまで自信を持って言われたら、頷いて返す以外ないし。
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