ふたりの彼女と、この出来事。 （新版）

「感情を表現することは難しい事じゃないんだ。この子は周りの状況を読み取って、自分の表情を変えられるんだ。ボクらが笑ってたら、この子はボクらにちゃんと笑顔を返してくれる」

そこでフッと、所長が宙を見上げた。

「ただそんな笑顔を見てるとさ、なんだか虚しくなるんだよね…」

寂しげに一点を見つめてる。

「虚しくなる？」

なんとなく、理由はわかる気はしますけど。

「ウン。確かに可愛らしく微笑んではくれる。だけど、それは周りの状況を見て判断してるだけなんだ。そこなんだよ、どうも物足りないって感じるのはね」

拳を握り締める所長。

「感情をアタマで判断するんじゃなくて、感情をココロで感じられるように出来ないかって思ってるんだ。もっと人間そっくりにね。…もう動きは人間そっくりに出来てる。人間そっくりの見た目も出来た。だから、これからボクらの次の目標となるのは、人間そっくりの『感じるココロ』なんだよ」

パッと腕を広げて語りかけてくる所長。

気持ちはわかりますよ。

でも…。