ふたりの彼女と、この出来事。 (新版)
「君の課題はまず何より、これから一年間の間にこの子の問題点を一つ残さずあぶり出すことさ。で、オマケに、何かヒントの一つでも見つけてくれたらラッキー、ってぐらいに思ってるんだ」

なるほど。まずは耐久試験をしっかりやってくれ、ってコトですね?

「ウン。でももちろん、条件はちゃんと守ってもらうよ。ミライの正体は例の彼女が気付くまで話しちゃいけない。彼女以外に広めちゃいけない」

そうだった。

それを考えると頭が痛いな。

どうしよう。

「守れるかなぁ~、一年間も…」

あの広海君相手に。

「何言ってるんだい。今からそんな、一年も先の事を心配したってしょうがないよ」

「しょうがない?」

「そうさ。気負う必要なんか無いんだよ。出来る事をしっかりやってくれればいいんだ。無理せず一つずつね」

優しく微笑む所長。

思わずニヤけ返しちゃったよ。

(出来る事を無理せず一つずつやってくれればいい、か)

教授と違って、優しい言葉を掛けてくれるじゃないですか。

「とにかく、色々と気をつかわないといけない場面も出てくると思うけど、まずは耐久試験の方、君を信じて任せるからさ。よろしく頼むよ」

と所長が椅子から立ち上がって、ニッコリした笑顔でポンッと肩を叩いてきた。

「ええ、わかりました」

所長がここの所長をやってる訳が、なんとなくわかった気がしましたよ。
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