ふたりの彼女と、この出来事。 (新版)
 その日部屋に帰ってきた時には、なんだかもうグッタリ。

「ふ~、疲れた疲れた…」

今日の疲れは簡単には取れそうにないな。

「先に入る?おフロ」

ミライが声を掛けてきてくれた。

疲れを取るにはおフロが一番、

そう言いたげな優しい笑顔で。

「ああ、そうだね。じゃあ先に入らせてもらおうかな」

言葉に甘えて先にフロに入る。

湯船にゆっくり浸かって出てくると、ローテーブルの上にご飯が並んでいた。

「えっ、これミライが作ったの?」

「うん」

「よく作れたね」

「うん、見てたから」

なるほど。

いつも僕が作ってる、スーパーのオカズをレンジで温めて盛り直し、ご飯をよそって、インスタントの味噌汁とカップサラダを付け加えた夕食。

しかも、たった今出来上がったようなタイミングの良さ。

「ありがとう」

いつもと変わらないけど、今日はなんだかおいしそうに見えるよ。

「いただきます…」

床に座り込んで一人箸をつける。

と、ミライが用意していた着替えを手に取った。

「じゃあ私、おフロに入ってくる」

「ああ、ゆっくりね」

自然と言葉を掛けてた。

(…いただきます)

週末の一時の休息。

来週からは広海君との毎日が始まる。

その前に、しっかり心と体を休めておかないとな。
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