ふたりの彼女と、この出来事。 (新版)
「ここ座ってよ先生。すぐコーヒー入れるから」

と立ち上がって部屋の隅の流し台へ歩いていく広海君。

「あ、ああ、すまない…」

空けてくれた席に腰を下ろして、ひとまず息を整える。

「ねえ先生、あれからミライさんと一緒に飲みに行った?」

「えっ?」

何を聞いてくるんだよ。

「行ってないの?ミライさんあんなに強いお酒を楽しそうに飲んでたじゃない。連れてってあげてないの?」

目を見開く広海君。

「ねえねえヒロ、ミライさんってそんなにお酒強いの?」

「そう、強いんだって!」

振り返る広海君。

院生たちもパッとおしゃべりモード全開。

「食べられない病気なんでしょ?なのにお酒は飲めるの?」

「少しは飲めるんだって。それがとっても強いのよ。ビックリしたんだから」

「ヒロがビックリするってスゴ~イ」

「ふ~ん。ねえ、どんなお酒飲んだらそんなに綺麗でいられるの?お肌ツルツルだもんね」

「お化粧ノリよさそう~」

「美容に良いお酒があるなら教えて♪」

「そんなお酒があったって、ルミちゃんには意味ないわよ」

「どうして?」

「ルミちゃんのお肌が荒れるのは、飲・み・す・ぎ!」

「ひどーい」

ハハハと笑いが起こった。

「酒は百薬の長と言うじゃないか。程々に飲むのが大事だという事だよ」

奥から声を上げる教授。

「そうですよねえ」

広海君が答えながら寄って来て、コーヒーを机にコトンと置いていった。
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