ふたりの彼女と、この出来事。 (新版)
ミライがボーリングをしたらどうなるか。

(全部ストライクになるんじゃないか?)

ロボットだから狙いは正確。

いくら何でもいきなりパーフェクトはちょっと。

(マズイマズイ)

広海君を引き止めないと!

「なあ広海君、ボーリングじゃなくて、何か他のにしないか」

声を掛けたけど、広海君は相手にしてくれない。

「どうしてぇ?体も動かせるし、ストレス発散には丁度いいじゃない」

腕を振りながら階段をズンズンと上って行く広海君。

(いやいや、)

マズイぞ、ここは何とか切り込まねば。

「いやほら、ミライの体でボーリングは出来ないんじゃないかって思うんだよ。なあ、ミライ」

広海君たちはまだミライが病気だと思ってるんだ、そこを突かないと。

振り向くと、後ろから階段を上って来ていたミライが首を振ってきた。

「出来ないって事はないけど、やった事ない」

そう答えるかミライ!

「えっホントに?一度もやった事ないの?」

そこに食いつくか広海君!

「うん。一度もやったことない」

真顔で返すミライ。

そりゃそうだろうけどさ~。

と、広海君がパッと僕を振り返った。

「だったら、先生が教えてあげたら?」

「えっ!」

「ボール投げるだけだから簡単じゃない。それにほら、手取り足取り教えてあげればふたりの距離だってグーンと近くなっていいしさ。ふたりで仲良く楽しめれば点数なんて関係ないって!」

トンでもない!

その点数が大事なんだよ。

「いや広海君、そうは言うけどさ、…」

渋ってはみたけど、言葉が出て来ない。
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