ふたりの彼女と、この出来事。 (新版)
「ほら、ヨッシーたちもこっちに来るみたいよ」

広海君の声に振り返ると、ヨッシーと彼がじゃれ合うように階段を上って来ていた。

「ねぇヒロ、レーン空いてるー?」

聞いてくるヨッシー。

フロアーを覗くと、並んだレーンの中で数組のグループがはしゃいでいるのが見えた。

「空いてるみたーい。私受付してくるから、ボール選んでてー」

足取りも軽く受付のカウンターへと走っていく広海君。

(マイッタな…)

もう話は決まっちゃってるよ。

ルミちゃんやヨッシーたちもバラバラとシューズやボール選びに向かい出してる。

(どうする)

堪らずミライの顔を見た。

口元に微笑みを浮かべたミライが、楽しげな様子でこっちを見上げてる。

「どうすればいいの?」

小首を傾げるミライ。

ホントになんにも知らないんだな。

どうしよう。

(…う~ん仕方ない、なるべく倒さないように教えるしかないか)

ストライクを「狙わないように」教えればいいんだ。

「いいかいミライ、簡単に言えば、ボールを投げてピンを倒せばいいんだよ。あんな風に」

レーンで投げているグループを指差した。

ちょうどピンがガコーンと豪快に弾けて歓声が響き渡ってきた。

その様子をミライがじっと見てる。

「ミライ、こっちだよ」

ミライに声を掛けてレンタルシューズを選び、ボールが並んだラックの列へと歩いた。

僕がいつもの軽めのボールを選ぶと、ミライも同じ重さを選んだ。

普通は女の子ならもっと軽いのを選ぶんだけど?

「大丈夫?持てるか?」

「うん。大丈夫」

難なくボールを掴むミライ。

(そりゃそうだよな)

中身はキカイだ、重さは関係無いのかも。

「投げ方はわかるかい?」

足の運び方とかフォームとか。

「ん~、わからないの」
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