ふたりの彼女と、この出来事。 (新版)
レーンで投げている人たちを振り返るミライ。

「みんな投げ方が違うから」

レーンのあちこちで楽しげにボールを投げる姿が見えるが、確かにみんなそれぞれ微妙なクセがあって、一人として同じ投げ方はない。

「誰をお手本にしたらいい?」

首を傾げて聞いてきた。

(そうか、誰かのマネで覚えようとしてるのか)

そういえばアイロンのかけ方も僕を見て覚えていた。とすれば…。

「だったら、僕の投げ方を見てマネすればいいよ!」

それなら絶対パーフェクトの可能性はないゾ!

(良くて120~130ってところかな)

ヘンな自信だけど。

「ようし、じゃあみんなのところへ行こう!」

パッと肩の荷が軽くなって、明るくみんなが集まるレーンへと戻った。

「7番と8番レーンよ。投げる順番は画面の通りね」

声を上げる広海君。

ボールが戻る台を挟んでUの字に並ぶ座席の左右に分かれて、まず一番目がヨッシー&彼、二番目が僕&ミライ、三番目が広海君&ルミちゃんの順になっていた。

「それじゃ始めましょー」

と、まずはラブラブの二人がじゃれあう様に投げ合って、続いて僕らの番が来た。

「先に投げるから、よく見てるんだよ」

ミライに声を掛けて、ボールを台から掴みあげてレーンの前に構えて立つ。

(…少しは格好いいトコ見せとかないとな)

ヘンな見栄が出てちょっと緊張。

(よし)

レーンに向かって歩み出し、1投目を投げる。

手から離れたボールがゴーッと音を立ててヘッドピンめがけて転がっていく。

(いいぞ!)

と思ったとたんに、ボールがスッと逸れてストライクは成らず。

「…ま、こんなもんか」

振り返ると、ボールを構えたミライが笑顔で僕を見て待っていた。

(そうだった。自分より、ミライの方だ)

果たしてミライはどんなボールを投げるのか。
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