ふたりの彼女と、この出来事。 (新版)
(あの笑顔がどうも気になるんだよなあ…)

と、僕を見つめていたミライの目線がフッと動いて正面のレーンを見据えた。

そして一歩、足をグッと前へ踏み出して投球モーションに入った。

(どうなる!)

振り抜いたミライの手を離れたボールが、ゴーッと音を響かせながらいいコースで転がっていく!

(まさか!)

ガコーンとピンが弾ける小気味いい音が響いた!

…が、結果は平凡に7本倒れただけ。

(よかったー)

外れて一安心、てのも変だけど。

「…」

と、ミライがじっとレーンの先を見つめて、少し小首を傾げて立ち尽くしていた。

(?)

気になって近づいていくと、ミライがフッと目を合わせてきた。

「どうしたんだい?」

そんな不思議そうな顔して。

「ちょっと左にズレたみたい」

とミライが答えて、みんなの方を振り返った。

「惜しい惜しい」

「いい感じだったよー」

「スペアはイケるんじゃない?」

声が掛かって、嬉しそうにみんなが迎えてくれる輪の中に入っていくミライ。

(左にズレたみたいって…)

まさか、残りを全部倒そうと狙ってるのか?

(いや、僕のフォームをマネしてるならムリな筈)

それで出来るなら僕が先にストライクを連発してる。

(でも、ズレた事を気にしてるって事は)

フォームを修正しようとしてるのか?

「先生!ボール戻って来てるよ!」

と広海君の声で、ハッと我に返った。
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