ふたりの彼女と、この出来事。 (新版)
「あ、ああ」

「ほらほら、ボーッとしてないで、スペア取っていいトコ見せないと先生!」

広海君に急かされるまま、ボールを掴んでレーンに向き直る。

(次の一投まで、様子を見てみるか…)

ボールを構え直して歩み出し、二投目を投げた。

「あっ」

集中力が欠けたせいか、1ピンだけ残ってしまった。

「先生惜しい惜しい!」

広海君が陽気に声を掛けてきた。ま、普段通りと言えば普段通りなんだけど。

「ミライさん、頑張って~」

と声を掛けられて、ボールを掴んで構えるミライ。

目が真剣に前を見つめてる。

(ム、どうなる!)

スッとレーンに向かって歩み出すミライ。

と、ミライの手を離れたボールがゴーッと音を立てて転がっていって、…

「あ~っ、残念ミライさん」

レーンに2ピンが残った。

「外れちゃった」

振り返って、笑顔を浮かべるミライ。

(…取り越し苦労だったのかな?)

外した事を気にする様子もなく、楽しげに座席に戻って座るミライ。

「次、私いくわよ~」

それからもゲームが続いたけど、ミライはスペアやストライクを続けたりなんて事はなかった。

(気にすることもなかったか…)

結局、ミライも含めてみんな平凡な結果で1ゲームをやり終えた。
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