風の鳴る町
序章
――風が鳴る。
ピュゥ、でもゴウ、でも無く、その中間の音を立てて、風が私を抜けていく。
木の葉が一枚、その風に流されてゆらゆらと地に落ち
見上げた空の中で、木々が悲しそうな音を立てて揺れていた。
――風が鳴る。
視線を落として地面を見つめる。
雨粒がアスファルトの上で光る。
街頭のオレンジ色の灯りを受けて、きらきらと。
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