風の鳴る町
明るい日差しと冷たい風に朝の訪れを知る。

起き上がり、窓を閉めた。

古い建物の立て付けは悪く、窓を開け閉めする度に小さな叫び声のような音を立てる。

少しだけ耳障りに思いながら、窓の鍵を閉めた。

まだ白々とした空。
恐らく未だ、起きている人は少ないだろう早朝。

昨夜、窓を開け、布団もかけずに眠ってしまったせいで肌が冷えきっている。

両腕で肘をさすりながら息を吐くと、微かに白く濁ってすぐに空気中へと消えた。

あくびをし、もう一度ベッドへ倒れ込む。

少し冷たい羽毛布団に身を包むと、氷のように冷たかった肌の表面が、少しだけ暖かくなる。

降臨祭まで、今日で丁度一週間を切った。
準備、とは名ばかりの大掃除も佳境。

掃除は意外に体力を使う。

もう一度、少しだけ眠ろうと瞼を閉じた。


想像する。

月夜、丸い舞台の上。
細い月と高い塔を背景に舞う母の姿。
実際には見たこと等無いから、細かい部分はぼんやりとしたままだ。

脳裏に塔の時計の音が響く。
瞬間、意識をゆっくりと手放し眠りに落ちた。

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