風の鳴る町

制服の上から、黒いローブを羽織ってフードで顔を隠す。

窓際に立って、立て付けの悪くなった窓を上に押し開ける。

口笛のような音を立てて、風が木や草の上を流れていく。


フードが耳元でばさばさと靡き、いっそう強く吹いた風に後ろへ流れてしまう。

両手の平を組むようにして、瞼を閉じて天を仰ぐ。

降臨祭の前に行う儀式。


――空が晴れ渡るように。

降臨祭が、無事に終わるように。


生徒達は天使に祈る。
手のひらを胸元で組み、空を見上げながら瞼を閉じて、静かに祈る。

風が、狂ったように吹き付ける。

ゆっくりと瞼を持ち上げると、視界には低く、今にも落ちそうな空。

強い風にも流されることなく、分厚い雲が空を覆う。

塔の時計が鐘を鳴らす。

小さな叫び声をあげる窓を閉め、カーテンを引いた。

明かりのついていない室内は暗く、少しだけ憂鬱な気分になりながら扉を開けて廊下へ出ると、黒いローブのフードをかぶり、俯き加減の少女たちが広場へ向かうために廊下を歩いている。

私は静かにフードをかぶり、その他の少女と同じように広場へ向かうために歩き出した。

古い木の床がぎしり、と音を立てて軋んだ。
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