風の鳴る町
降臨祭
風が止む。
木々のざわめきが鎮まり
鐘の音が静寂を支配する。
ゆっくりと、閉じていた瞼を開く。
校舎や寮、敷地内の明かりが全て消された暗闇の中、薄ぼんやりとした月の光が舞台を照らす。
時計の鐘が、尾を引くように静寂の中に消えた。
少女たちは手を組み合わせたまま、真っ直ぐと舞台を見つめる。
月の光でぼんやりと浮かび上がる舞台の上に、音もなく軽やかに人影が現れると、ピアノの音が、水面に朝露が落ちるかの如く、静寂に浸透する。
踊り子の指先は控えがちに天を求め、小鳥の囀りのように軽やかに鳴り渡ったフルートの音色に、その足は舞台の上を滑るように舞っていく。
細い、細い音色に合わせて、
その指が、腕が、弧を描く。
水面の上を滑るかのように舞い、白い衣装が月の光に反射して時折きらきらと輝いてみせる。
静けさの中、一点の過ちもないかのような表情をして、踊り子の仮面をかぶった有本菜摘が舞いを演じる。
くるくると舞台の上で回り、その長い髪すらも自慢げに揺れている。
両手を組んで、その片膝を舞台について菜摘が天を仰いだ。
ピアノが旋律を奏で、菜摘の両腕が天へ向けて伸ばされた、その瞬間。
空が、光った。
同時に、地を叩き割るような轟音と共に雷が落ちる。