風の鳴る町
第一章
嵐の次の日
心臓に直接響くような目覚まし時計の音に、舌打ちでもしたい気持ちになって瞼をぎゅっと瞑る。
昨夜降り続いた雨と、窓を揺らす風のせいで殆ど眠れていない。
寝不足でぼんやりした頭のまま、あくびを吐き出しながら起き上がる。
手を伸ばしてカーテンを開けると、雨粒が窓を滴って流れ落ちた。
あくびをもう一度吐き出して、裸足の指先を布団から出す。
触れた、古いフローリングの床は冷たい。
雨上がりの、まだ薄暗い朝。
台風の多い時期だから、このまま雨が続かなければ良いとぼんやりと思う。
雨が降れば
ふと、小さい頃に母から聞いた話を思い出す。
――雨が降れば風が鳴る。
風が鳴れば少女が消える。