風の鳴る町
第一章

嵐の次の日


心臓に直接響くような目覚まし時計の音に、舌打ちでもしたい気持ちになって瞼をぎゅっと瞑る。

昨夜降り続いた雨と、窓を揺らす風のせいで殆ど眠れていない。

寝不足でぼんやりした頭のまま、あくびを吐き出しながら起き上がる。

手を伸ばしてカーテンを開けると、雨粒が窓を滴って流れ落ちた。


あくびをもう一度吐き出して、裸足の指先を布団から出す。
触れた、古いフローリングの床は冷たい。

雨上がりの、まだ薄暗い朝。

台風の多い時期だから、このまま雨が続かなければ良いとぼんやりと思う。


雨が降れば



ふと、小さい頃に母から聞いた話を思い出す。


――雨が降れば風が鳴る。

風が鳴れば少女が消える。

< 2 / 24 >

この作品をシェア

pagetop