風の鳴る町
広場は叫び声に満ち、瞬きをした次の瞬間には、嵐のような強い雨が各々の黒いローブを打ち付ける。

ピアノとフルートの音が掻き消え、月の光が雲に消える。

「天罰よ!天罰が下ったんだわ!」

激しい雨音の中、泣き叫ぶような声が聞こえて視線を向けると、寮内に逃げ込むため、駆け足に広場を去っていく少女たちの流れを遮るように立ち止まる朝生柚希の姿を見つける。

顔色は青く、震えた両手の平は、溢れそうな叫び声を押さえ込むかのように口元に当てられている。

見開かれた瞳は揺れ、それでも真っ直ぐに一点を見つめて。

「朝生さん、早く戻りましょう」

駆け寄って、声かける。
激しい雨音と、少女たちの駆ける足音に声が自然と大きくなってしまう。

雨粒が顔を絶え間なく打つ。
目を細めなければ、顔を上げていることすら辛い。
水を吸ったローブが重く、体を濡らしていく。

朝生柚希が、震える指先で一点を指差す。

その先を視線で追う。

黒く焼け、雷の衝撃で真ん中の部分から砕けた舞台。

息を呑んで、目を見開いた。

雨粒が重たく、絶え間なく地面の上に落ちては跳ねる。

雨粒一粒一粒を砕くかのように、怒り猛った風が鳴る。

木々が折れてしまいそうな程、その体を揺らす。


焼け焦げた舞台に、菜摘の姿はどこにも無かった。
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