風の鳴る町
空が光る。
轟音が鳴り響く。
震える朝生さんの腕を掴んで、寮へ向かう道を走る。
正面から打ち付ける雨のせいで目が開けていられない。
沢山の少女たちの足音を頼りにして、冷えきった風を呑み込みながら走る。
「天罰よ。天罰だわ」
心が壊れたかのように繰り返し呟く、声。
雨に濡れて緩くなった芝生に足を取られ、何度か転びそうになりながら、身長の倍の高さはある扉を開けて寮に駆け込むと、荒い呼吸を繰り返す少女たちの姿でエントランスは溢れかえっていた。
「凄い雨ね」
「台風でも来るのかしら」
不安に満ちた声色で会話しながら、彼女たちは皆窓の外へ視線を向ける。
相変わらず震える朝生さんをソファーに座らせ、菜摘の姿を探してエントランスを駆ける。
走ったせいで息が切れ、ローブから滴り落ちた水滴が毛足の短い絨毯を濡らす。
名前を呼びながら探す。
けれど、
菜摘の姿を見た者は誰もいない。
窓ガラスががたがたと音を立てて揺れる。
雨が降る。
風が鳴る。
雷の光と衝撃を残した舞台から、菜摘はその姿を消した。