風の鳴る町
章間
ノート
雨が激しく窓を打ち、嵐の中で弾ける。
風が大地を駆け抜けていく轟音に、地球が揺さぶられているようだ。
シャワーを浴び、濡れた髪をタオルで乾かす。
もうこれ以上は何処にも逃げることができない、行き止まりまで追い詰められた逃亡者のような気持ちになりながら部屋の明かりを消し、甘い香りのキャンドルに火を灯す。
――有本菜摘。
一部の生徒と教師で手分けをして、菜摘の姿を探して校舎や寮を回ったけれど、菜摘が忽然と姿を消したことを再確認するだけに終わった。
――天罰よ。
喉を裂くような、朝生柚希の叫びを思い出す。
「天罰」
口に出してすぐ、その滑稽さに口元を歪めて笑う。
狂ったように窓が鳴る。
台風に敷地内すべてが呑み込まれたかのような有り様だ。
風が、鳴る。
その中に一瞬、菜摘の叫びを聞いた気がして、窓の外を見つめた。
遠くでは塔の時計が淡く光り、ゆるやかに、静かに時を刻んでいた。