風の鳴る町
踊り子
「桜坂さんは真面目ね」
吐息で窓を曇らせ、曇りと汚れを雑巾で拭いていた背中に、ため息交じりの言葉が投げつけられる。
窓を拭く手を止め振り返ると、生徒会長の朝生柚希が泣き顔に見えなくもない、淋しそうな笑顔を浮かべて立っている。
「真面目だなんて……。朝生さんこそ、生徒会長の役目をしっかりとこなして、とても立派だわ」
尊敬を込めた口調と表情をつくってそう答える。
ううん、と首を振った朝生さんは、やはりどこか淋しそうだ。
「どうかなさったの?」
「……ねぇ桜坂さん。降臨祭って、一体なんの為にやるのかしら」
そっと隣に立ち、窓枠に指先を這わせながら伏し目がちに呟く声は、相変わらず強い風の音に掻き消されそうな程に儚い。
「私、なんだか不吉な予感がしますの。……こわいわ、とても」
最後はもう、吐息と違わない程の呟き。人の少ない教室内で、生徒たちは黙々と清掃をしている。
静寂の、中。
「晴れると良いわね」
視線を私に合わせないまま、泣き顔のような表情をして。
指先をそっと窓枠から離して、独り言のようにそう呟いた。
吐息で窓を曇らせ、曇りと汚れを雑巾で拭いていた背中に、ため息交じりの言葉が投げつけられる。
窓を拭く手を止め振り返ると、生徒会長の朝生柚希が泣き顔に見えなくもない、淋しそうな笑顔を浮かべて立っている。
「真面目だなんて……。朝生さんこそ、生徒会長の役目をしっかりとこなして、とても立派だわ」
尊敬を込めた口調と表情をつくってそう答える。
ううん、と首を振った朝生さんは、やはりどこか淋しそうだ。
「どうかなさったの?」
「……ねぇ桜坂さん。降臨祭って、一体なんの為にやるのかしら」
そっと隣に立ち、窓枠に指先を這わせながら伏し目がちに呟く声は、相変わらず強い風の音に掻き消されそうな程に儚い。
「私、なんだか不吉な予感がしますの。……こわいわ、とても」
最後はもう、吐息と違わない程の呟き。人の少ない教室内で、生徒たちは黙々と清掃をしている。
静寂の、中。
「晴れると良いわね」
視線を私に合わせないまま、泣き顔のような表情をして。
指先をそっと窓枠から離して、独り言のようにそう呟いた。