風の鳴る町


降臨祭の準備は滞りなく進む。

敷地内全てを清掃し、清める。準備は殆どかその作業で終わり、その他は極一部の生徒のみが、踊り子が降臨祭当日に着る衣装を縫う。

デザインは毎年同じだけれど、その年に着た衣装は降臨祭が幕を閉じた深夜、ひっそりと焼かれ、また翌年に新しく縫われるのだ。

衣装は白く、風の動きに柔らかく動く。
短いスカートの裾と長い袖は水のようにゆらめき、月の光に反射してまるで本当の天使かの如く、踊り子は舞台の上で舞う。

「桜坂先輩」

甘い、柔らかい声色に呼ばれて振り返る。

「先ほど衣装が完成いたしましたの。一番に桜坂先輩にお知らせしたくてお探ししていたんですよ。先輩がここにいらしてくれて良かったわ。私とっても嬉しくて、早く誰かにお話したくてしょうがなかったんです」

柔らかく、春の日差しのような微笑みを浮かべながら、小町雪歩がうっとりとした口調で言う。

その姿は誰よりも清らかな少女のようで、踊り子には彼女のような子が相応しいと、私は思う。

「それは素敵だわ。お疲れさまです。今から降臨祭が楽しみね」

「えぇ、とても。今年どなたが踊り子に選ばれるのかしら?あの舞いを見ていると、うっとりとしてしまいますもの」


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