【短】きっと明日も、君のことが好きだから。



「っえ……?」


息が、止まるかと思った。

心臓が、うるさいくらいに鳴り始める。


(なんで、どうして、え、どうして、ここに)


そこにいた人物に、目を奪われた。

困ったように笑う君に、顔があつくなる。


「……快、くん」


やっとの思いで声になった君の名前。

でも、その名前を口にした瞬間、ばかみたいに手と足が震えてきた。


「……昨日、塾があって、来られなかったから」


不規則に音を鳴らし続ける、心臓。

火が出ちゃうんじゃないかってくらいあつくなった、顔。


「バレンタインのお返し。渡しに来たんだ」


「っ、」


……涙が、出そうになった。

期待なんかしたのが悪いって。

さっさとあきらめた方がいいって。

ずっと、無理だと思ってたから。


「あと……俺は、春名さんと同じ気持ちは返せない」


こうしてお返しをくれるだけで感動して、どうしようもないのに。

こんな私にお返事までしてくれて、立ってられなくなりそうになる。


「ごめん」


「っ……」


それくらい、うれしい。

なのに。


(涙が出てくるのは、どうしてなの)


かなしいとうれしいが混ざって、心の中がよく分からなくなる。

でも、やっぱり。


「う、んっ……」


(快くんの、特別に、なってみたかったなぁ……っ)


< 18 / 22 >

この作品をシェア

pagetop