【短】きっと明日も、君のことが好きだから。



つー……、と。

こらえきれなかった涙が、私の頬を伝い、ゆっくりと流れる。


「っ、?」


つい目を見開いたのは、君が、私の頬にふれたから。


「……快、くん」


夕日のせいか、少し赤く染まった快くんの顔を見つめる。


(こんなに、近くにいるなんて、夢みたい)


快くんは、私の涙を優しくぬぐうと、くしゃっと無邪気に笑った。


「ありがとう」


(はじめて、見た……こんな、砕けた笑顔)


――とくん、とくん


働きすぎな心臓と、真っ赤であろうあつい顔。

涙なんて、気にならないくらいに。

恥ずかしくて、うれしくて、どきどきする。


(あぁ、やっぱり、私は)


「あっ、言い忘れてたけど……バレンタインのチョコ、すっげーうまかった。作るの、上手なんだな」


(たぶん、絶対、明日も)


「来年ももらえたらな……なっ、なーんて。今のは冗談!」


「え、……つ、作ろうかな! 受験も終わってるもんねっ」


「あっ、はは、そうだな。卒業式くらい?」


「う、うん。あ……あと一年で、卒業なんだね」


「そ、うだな。早い」


「うん。……会えなくなるの、さみしいなぁ」


「……え?」


「え? あ、私……? え、あ、うん? あっ、あれ? な、なんでも、ないよっ…!」


「っ……」


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