【短編小説】高校生昇華物語
あの人
あの人とは──。
宇井が言ってたあの人とは、上級生──梶原。
この学校で、一番強いとされている。
強いと言われている。
サボり魔柔道部員である。
素行も悪く、宇井よりも名の知れた不良だ。
よく退学にならなかったと思わざるを得ない。そんな生徒である。
そんな最凶の生徒に、こんなこと──こんなに派手に自分の仲間。否、手下をやられ、黙っている訳はないだろう。
「お前、本当にあいつらの仲間なのか?」
「へ?」
突き飛ばされ、独り床にへたれこんでいる私に男の子は問うた。
「お前は、何故あいつらの仲間になったんだ?」
「あんたには…わかる筈もない話よ…あんたみたいな強いやつには、わかる筈もない。私の気持ちだって! 全部!」
「へえ? よくわかんねーけど、お前は弱いんだ? お前は其のままでいいんだ?」
よくない…
「変わりたいとは思わないのか? 変わろうとは思わないのか? 強くなりたいとは思わないのか? どうして変わらないんだ?」
「変われたら…変われたら…どんなによかったか! そんな簡単に変われる筈もない! 強くなれたらどれ程よかっただろう私よりも強い人間に…私より上手い人間にそんなこと…『変わろう』とか『強く』とか言われたくないんだよ!」
思い切り叫ぶような声で、何の関係もない男の子にそう言った。
何してるんだろう、私。
宇井が言ってたあの人とは、上級生──梶原。
この学校で、一番強いとされている。
強いと言われている。
サボり魔柔道部員である。
素行も悪く、宇井よりも名の知れた不良だ。
よく退学にならなかったと思わざるを得ない。そんな生徒である。
そんな最凶の生徒に、こんなこと──こんなに派手に自分の仲間。否、手下をやられ、黙っている訳はないだろう。
「お前、本当にあいつらの仲間なのか?」
「へ?」
突き飛ばされ、独り床にへたれこんでいる私に男の子は問うた。
「お前は、何故あいつらの仲間になったんだ?」
「あんたには…わかる筈もない話よ…あんたみたいな強いやつには、わかる筈もない。私の気持ちだって! 全部!」
「へえ? よくわかんねーけど、お前は弱いんだ? お前は其のままでいいんだ?」
よくない…
「変わりたいとは思わないのか? 変わろうとは思わないのか? 強くなりたいとは思わないのか? どうして変わらないんだ?」
「変われたら…変われたら…どんなによかったか! そんな簡単に変われる筈もない! 強くなれたらどれ程よかっただろう私よりも強い人間に…私より上手い人間にそんなこと…『変わろう』とか『強く』とか言われたくないんだよ!」
思い切り叫ぶような声で、何の関係もない男の子にそう言った。
何してるんだろう、私。