【短編小説】高校生昇華物語
朝から色々と最悪だった。

そう言うには少し語弊があった。


朝から色々と最悪が始まった──とでも言うべきであった。

というのも、最悪の中で1番最悪だったのは昼間だからである。


「受け身をしっかりとれ! 今の攻撃は避けられただろ!」

「五月蝿い!」


式錢くんにシバかれていたからである。

肉体的にも精神的にも鍛えられそうなトレーニング内容をひたすらにやらされていた。

殴られるとより痛い部位、突かれると動けなくなるところなどを教えられた。

実際にやられながら。


…痛い。


学校での成績はかなり悪いらしいが、何故そんなことばかり知っているのか不思議なものである。

案外保健体育の成績だけは良いのかもしれない。

もしもこの知識を喧嘩のためだけに覚えたのだとしたら、その記憶力を他のことに生かすべきだと本気で思う。というか、そのためだけに覚えるのは流石にドS過ぎる。


「いや、喧嘩してるうちに感覚で覚えた」

あらゆる意味で最悪な回答だった。


純粋な素手での殴り合いの喧嘩、得物ありの喧嘩、口喧嘩など。

多種多様な喧嘩のシチュエーションを鍛えられた。

正直実践しがたいものも多かったが、覚えておいても特に損なこともないので頑張って全部覚えた。

これで強くなれるのかは定かではないけれど、きっと強くなるために頑張った。

しかし。


「こ、これ毎週やるの…?」

タイヤを引きずり走りながら私は式錢くんに聞く。

「はあ? 毎日だよ」


まじか。

まだまだ道は険しそうです。
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