【短編小説】高校生昇華物語
「おらぁあ!」


…本当だ。

左拳だ。

私から見て右側…。


言われた通り、左に避ける。

そして、素早く相手の左脇に回り込み──

おもいっきり殴る。

「なんだよ、避けんなy……ヴぐッ…」


かなりのダメージっぽいが、まだ倒れない。

このまま一気に畳み掛ける。

右ストレートの次は顔面に蹴り。


これで…終わらせてやる……!

もう、弱いままなんて…

「嫌なんだよッ!」


顔面への蹴りが上手く入り、梶原はぶっ飛んだ。

「…」

梶原は私を軽く睨んだだけで何も言ってこなかった。

「もう、終わりだ。私は勝った。」

自分に、勝った。

「…」

梶原は、何も言わない。

何も言わず、倒れっぱなしだ。

気絶はしていない。

ただただ、無言で倒れたまま私を見ている。


「私は勝った、ので、これで…先輩は私と何の関係もない、ただの私と出会う前の学園最凶に戻ってくださいね」

そう言って、私は梶原に背を向けてゆっくり歩いた。

少し微笑みながら。
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