【短編小説】高校生昇華物語
その子は、片手に竹刀を持った身長の低い童顔な男の子だった。

その子の周りには、散らばるように倒れた私の上っ面だけの仲間。

この子がやったのだろうか。

この人数差で、竹刀一本で、倒したというのだろうか。

そんなことを考える。


にやり。

男の子は確かに笑った。

「隠れてねーで、出てこいよ」

柱の影に隠れていたことは既にバレていたらしい。

素直に出ていく。

「あんまり手応えがねーからつまんなくってよ。こいつら」

男の子は言う。


やっぱりこの子が倒したらしい。


「こ、こんな…」

声は震えている。


「ああん?」

「こんなことして許されると思ってるの!?」

「許されるだろ。こいつらが先に喧嘩ふっかけてきたんだからな。まあ、許されなくてもいいけどな。許されなかったら、邪魔なやつ片っ端からぶっ倒すだけだ」

「…」


発想が過激過ぎる。


「お前こそ、何してるんだ。こんなところで」


お前もこいつらの仲間なのか?と男の子は私に尋ねる。


仲間。

望んでいたわけではない。

今ここで、「仲間じゃない」とはっきり言えば、私は見逃してもらえるのだろうか。


否。

この子に見逃してもらえても、宇井たちは見逃してくれないだろう。


仲間になんて、なりたくなかった。
< 8 / 39 >

この作品をシェア

pagetop