* KING+1 *
「はい出来た。我ながら上出来だわ。杏がまたキュートになったわ。」


私の背中すぐ後ろに顔があって 目線を合わす圭さん。


「素敵にカットして頂きありがとうございます。」


「ほら、箒でカットした髪を掃くから テーブルの方へ行っててね。」


魔女みたいな箒で 素早く掃いて 部屋が魔法を使った様に元通りになる。


「お待たせ姫、さぁ飲もうか?今日は姫の心を全部見るつもりだから覚悟しろよ。」


急に 部屋の空気が変わった?

えっと…たまに仕事の時に 男モードはある圭さん。だけどプライベートの時は このバージョン1度も見た事ないんだけど?


「あのさぁ 杏勘違いしてるけど、俺ノーマルに男だし。だからヤバイんだよ…ハハ。

それなのに、警戒心もなく平気で部屋に入って 襲われても文句言えないからな。」


え、え─っ。ちょっと待って?私聞いてないし、知らなかったんだけど…。先輩もその事知ってる筈だよね?どうして教えてくれなかったの?


「そんなに驚く事?俺 杏の事狙ってるアピールかなりしてただろ?知らないとは言わせない…。

だから、無理にでもパリに連れて来たんだよ。俺の権限で お前のパリ行き決定したんだから…。」


そんな裏事情まで知らない─。私だけ知らされなかったのは 私情が大半を占めていたから?


「なぁ、杏が今誰を好きとかは敢えて聞かない。だけど俺にもチャンスがあれば、お前を力ずくでも奪うから油断はするなよ?」


コクコクと頭を振って答える。


「もぅ楽しく飲みたいのに、そんな固くならないでよ~。ほらグラス持って乾杯しましょ?楽しいパリの夜に…。」


グラスをカチと軽く当てて乾杯したけれど、圭さんは 今のが本当?いつものが?どれが?色々考えてわからなくなる──


いつになく口数が少なくなり いつもよりワインを飲んでしまい、不覚にも今はとんでもなく危険極まりないのに 意識を飛ばしてしまったのであった…


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