* KING+1 *
そのまま先輩の部屋に直行と思いきや、どうやら何処に出掛けるようだ。


「先輩、アパートには戻らないのですか?」


「ああ、今日は新しい発見をしたいから、お前に見せたい場所があるんだ。」


へぇ先輩の新しい発見って気になる。聞いても教えてくれなさそうなんで、黙って付いていくしかなかった。

メトロを降りて 歩く先にフォーラムがあり人で賑わっている。

この広場知ってる───。
フォーラム デ アールだ。所謂 日本でいうショッピングモール。

私 ここのお洒落なガラス張りの建物に来たかったのだけれど、先輩ってやっぱエスパーでしょう?


広場前で何かのパフォーマンスをしている様で 人の壁が出来ていて、私は興味津々で覗いて見た。

男の人が1人で ジャグリングをしていて、中々面白い。四角に囲まれている見物人は多く かなり人気があるパフォーマーのよう。

そのパフォーマーがぐるりと見物客の前で、誰かを探している。パンピー飛び入り参加出来るんだ、と呑気に思っていると───

私の目の前でピタリと止まる人に、ドキリとする。

えっ?私?


パフォーマーに腕を引かれ 中央に連れていかれ 何か話ているけれど、緊張と動揺で何もわからない…。


ジェスチャーで 伝えられ コクコクと頷きその指示に従うが、私が見せた華麗なる芸は至って簡単なもの。

ボールを渡され それをパフォーマーに上手く投げるだけ…。私じゃなくても?という突っ込みはフランス語では 到底出来ない。

終わったようなので、にっこり笑って失礼しようもんなら、パフォーマーからの熱いキスをお見舞いされた。

はぁ?何その軽さ…流石パリと思い、私もお返しをしてやった。負けず嫌いだし、パリの男に負けるなんて、やだ!


驚いてるパフォーマーと、やたらうけてパフォーマンスの倍ぐらいの拍手の外野に、やっちゃった感が急に襲い 私は急に恥ずかしくなる。

けど、固まる私に救世主がさっと現れ 私を何食わぬ顔で浚う パリでイケテる男。


やっぱり敵わない───
私が大好きな人が守ってくれたのであった。



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