サヨナラは海の中
「貝殻…?」
「うん、そう。ここに来る途中で拾ったんだ。綺麗な色だったからついね」
「天色。綺麗だね。」
「天色っていうんだ?青空みたいな色だよね」
「蒼海の瞳の色みたい」
彼女が俺の瞳をのぞき込み、そう言った。
「えっ、俺の?」
俺の瞳は無難な黒のはずなんだけど…。
「そう。海を見つめる蒼海の瞳の色。キラキラしてる。」
「そ、そうかな…」
そんな真顔で言われると、ちょっと…いや、かなり照れる。
海と蒼海って名称一緒だし紛らわしいな、なんて思ってたことが吹っ飛ぶくらい。
「うん。その色好き。」
彼女は小首を傾げ、目を細めて微笑んだ。
彼女の漆黒の長い髪がサラッと揺れた。
何故だか俺は、彼女の微笑みに違和感を覚えた。