サヨナラは海の中
再び、静寂に染まると思われた空間の中、美波は口を開いた。
「……私ね、蒼海を助けたこと、後悔してないよ。だって、こんな私のために、そんなに綺麗な涙を流してくれているんだもん。」
美波は本当に嬉しそうだった。
「え……」
彼女の言っている意味が分からなかった。
「私さ、学校に上手く馴染めなくて。夏休み中とか関係なしに学校に行かずに大好きな海に毎日通ってた。」
「いつもは早朝に通ってたんだけど、あの日だけは偶然昼間に海に行ったの。」
「そうしたら、蒼海と陽人くんに会った。2人とも私なんかをすごく慕ってくれて、本当に本当に嬉しかった」
まっすぐ俺を見つめながら、当時の事を話す美波はとても優しい思い出をなぞるかのように、穏やかな表情をしていた。
「……こんなに長い間、私が成仏しないで海にいたのはね?あの時の男の子…蒼海の無事をこの目で確かめたかったからなの。」