サヨナラは海の中
「えっ……?美波、これはどういう……」
「私はもうとっくに死んでるからね。蒼海にまた会えてこの世に心残りもなくなったし!いい加減、天に昇らなきゃ、神様に怒られちゃうよ」
ふふっと笑う彼女の身体はどんどん透けていく。
皮肉にも、彼女の透けた身体越しに見える海は今までで1番綺麗に思えた。
「……っ、待ってよ!陽人!陽人も会いたいと思うよ!せめてもう少しいてよ!あともう少し!…っそんなすぐいかなくても…!!」
必死だった。
溢れる涙も気にせず、ただひたすら懇願した。
まだ、俺は美波といたい。
話したいことがまだたくさんある。
「…ありがとう。でも、それはできないや…。もう時間がないみたい。」
「そんな!!嫌だ!!」
「蒼海、笑ってくれないかな?私、蒼海の笑った顔が好きなんだ」
美波は弱々しくも朗らかに笑って、俺に手を伸ばす。
その指は俺の涙を拭う仕草をしたが、空を切った。
その時、やっと我に返った。
美波は頑張って明るく笑っているというのに。
俺がめそめそしてどうするんだ。
「………俺さ、1つだけ。陽人に教えて貰わないで自力で思い出したことがあるんだ。」
「えっ?」