君と見た色
「実は私、あと少しで死んじゃうの」

その言葉に僕の頭は思考を停止してしまった。 それでも松山さんは話を続ける。

「ねぇ、宮田君。筋萎縮性側索硬化症って知ってる?」

その病名は聞いた事がある。

筋萎縮性側索硬化症、それは徐々に筋力が衰えて行き、歩く事は愚か話す事や息をする事も出来なくなりやがては死んでしまう、不治の病だ。

「病気と診断されたのは先月の事。だから私の余命は来年の三月くらいまでだと自分では思ってる。そう、ちょうど卒業式くらいかな」

松山さんの話は進んでいくが、内容が頭に入って来なかった。

松山さんが死ぬ?それも来年に?

「本当はね、最後の一年を楽しく過ごしたかったの。でもいざクラスのみんなに言うって考えたら。勇気が出なくて……。だから、宮田君……。話聞いてくれてありがとね」

松山さんは涙を流した。その涙を見るとやっぱり今まで誰にも病気の事を言えなかったのが苦しかったんだ。そう思った。だから僕も少しでもいいから彼女に救いの手を差し伸べてあげたかった。

「松山さん、僕なんかに話してくれてありがとね。僕は松山さんが人生楽しんで欲しいから、松山さんの手助けをするよ。このまま学校にも来れずに終わるのは嫌でしょ?」

「うん、でも私迷惑、沢山かけるかもしれないよ」

「大丈夫、絶対僕は松山さんを裏切ったりしないから」
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