【短】おにぎり

「あの―!」

 おにぎりバイトの主は、肩をビクっと上にあげていた。

両耳にはめていたイヤフォンを抜き、お化けがいるかのように私の方に振り向いた。

「……お前、なんでここに」

 そう呟き私の方に向かってくると思いきや、彼は玄関前にいる私の足を蹴飛ばして、外に出て行った。

「痛っ、あんにゃりょ」

 私は彼の後を追った。

 彼は私より十センチ身長が高くて、大学生のようであった。

 亀のように彼は足が遅く、陸上で県大会に行った私はすぐ追いついた。
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