【短】おにぎり

「……」

 会話が終わってしまった。
 ってか、疑問だったんだけど。

 なんで、私のこと知ってた?
あ、でも、当たり前か。
おにぎりバイトの主だもんね。

いやいや、でも会ったことはないし。
 初対面だよね。

でも、聞き間違えではない。
 確実に彼は言った。

 なんでお前がここにって。

 彼は下に俯いているようだが道端にある蟻達が列になって、食料を運んでいる姿を見ていた。

 それは蟻達が踏まれないように、片足で彼が守っていた。

 表情は分からないが、俺がいるから大丈夫だと言っているようであった。

 やっぱり、おにぎりが好きな人は優しいに決まってる。

 私は心の中で微笑んだ。
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