【短】おにぎり

「あの―、なんで私のこと知ってたんですか」

「はあ?」

「知ってましたよね?」

「……べ、別に知らねぇよ」

 彼はフ―ドを被っているが、嘘を付いているのはバレバレだ。

 蟻達は私たちが話し始めると、急いで食料を運び始めた。

「なんで私を知る必要があるんですか?」

 私は少し強い口調で彼に発した。

 彼は困った様子で私を覗うように見てきた。

「…あんたには分かんないよ。俺の気持ち」

 私もあなたの気持ちなんて知らないよ。
 でもね、知りたいの。

 こんな気持ち、初めてで分からないけど。
「…分かりませんね。あなたの気持ち。でも、知りたいんです」

 私はフ―ドに被されていて見えないが彼の目を見てそう呟いた。
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