【短】おにぎり

「なんで、俺のことを知りたいんだ?」

 彼は私の言葉に驚いたのか左手でフ―ドをバサっと取った。

 彼の顔は鼻筋が通っていて、ぽてっとした唇に四本の指は入るんじゃないかってくらいの広いおでこ。

 そして、コンパスで上手に丸く描いたような丸い黒目に短い髪。

 暗い印象から感じられない明るく良い印象を受けやすい外見だ。

「私も分かりません」

 彼に伝わるように目を見開きながら、私は見えない心の中を見据えた。

「自分でも分からない? はあ? 重症だな」

 彼はケッと舌打ちをしたら、カップルと思われる二人が手を繋ぎ私たちの横を通り過ぎた。
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