淡麗なうわずみ
「そう、じゃあ、おいで。実は買いに行かなくても、食べるものあるし」

と、普通に手をつながれる。

あまりに自然で、あらがうのもためらわれる。

何、自意識過剰な反応してるんだって思われそうで。

まあ、いいか。

意外に冷たい手に、絡め取られたまま歩き出す。

「...よかった。断られなくて」

って、断る選択肢が現れなかった気がするんだけど。

気が合って、よく一緒に遊びに行く友達なのだ。

ご飯一緒に食べようー。

って、普通の誘いじゃなかったのか?

ちょっと、考える。

「ずっと、バイト帰り、誘おうと思ってたんだ。でも、いっつも口から出るのは『気をつけて帰りなね』」

そういえば、いっつも言ってくれる。

「実は、バイトの後も一緒にいたくて。でも、何て誘っていいか分からなくて」

それで、食べ物とお酒で釣るとか...

手が離されて、肩に手がまわされて、そのせいで、さっきより距離が近い。

でも、嫌じゃない。
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