淡麗なうわずみ
分からなくなる。

困っていると、

「...じゃあ、いいんだ」

九条くんの表情がくずれる。

ああ、今まで、もしかして緊張してたんだ。

あたしに?

あたしなんかに?

何か勿体ないな。

「せっかく友達だと思ってもらってたのに、ごめん。オレはずっと好きだったんだ」

うわあ。

「って、九条くん、あたしなんかでいいんだ。もっと理想高い人かと...」

九条くんは深ーいため息をつく。

「拒否られるか、茶化されるか、どっちかだろうなとは思ってた」

「どっちもしてないよ。何か...混乱してるけど。でも、嬉しい...かな...でも、本当に?」

「何でこんなドキドキしながら嘘つかなきゃいけないんだ」

「そうか...じゃあ、嬉しいかも」

「かも、って」

「嬉しいです」

言って、急に『嬉しさ』が体の中で全開になった。

疑い深くて、鈍いんだな、あたしは。

「ごめん、あたしも、今、嘘だって言われたら、物凄いショックかも。友達の九条くんより、今の方がいい」

九条くんは笑ってくれた。

「さっき、順序無視してごめん。ちゃんと言って、受け入れてもらってからするべきでした」

「...」

そうだった。
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