メールチェッカー　【1】

由美子がフリーのアドレス相手に愚痴をこぼすようになったのは随分前の話だ。


友達には彼氏の悪口など言いたくないし、かと言って直接本人に言ったところで耳を貸すような相手ではない。

けれど、たまってゆく太田への不満をどうにかして解消したい。

それならば架空の異性メル友を作って、そこに全部吐き出してしまおう、と軽い気持ちで思いついたのだった。


最初はアツシ相手に自分が愚痴をこぼすだけだった。

でも、アツシになりきり、それに返信をすることでより一層ストレスが晴れる自分に気付いた。


ただ、これでは太田には願いや思いが伝わらない。


負けず嫌いでヤキモチ妬きな太田にこのメールのやりとりを見せれば、対抗心に火がついて変わってくれるかもしれない。

そんなわずかな期待を抱き計画を実行したところ、まんまと成功してしまったというわけだ。

< 20 / 60 >
表紙・目次

この作品をシェア

pagetop