メールチェッカー 【1】
日中、予定外の緊急会議が入り、留実は自分の仕事が片づかないまま、もうすぐ定時の午後六時を迎えようとしていた。
よりによって、明日に回せない仕事ばかりが残っている。
あーあ、残業確定か。
留実は、トイレに行く素振りで携帯をこっそりと持ち出すと、恋人の稔矢(としや)にメールを打った。
『ごめん、少し残業。待ち合わせ、七時でお願い』
トイレの鏡を覗き込む。
週末なのに加え、会議で体力を消耗したのか、そこに映る自分の顔はいつもよりもくたびれて見えた。
稔矢とは、行きつけの焼鳥屋に行くことになっている。
活気溢れる店内に広がる、香ばしい匂い。
思い浮かべた途端、腹の虫がざわつき始めた。
――ビールが待っている。頑張ろう。
何とか腹の虫たちをなだめ、トイレから出ようとしたその時、手中の携帯が小刻みに震えた。