メールチェッカー 【1】
だが、出てきた言葉はどれも違うものだった。
『挨拶』
『あいつ』
『間』
期待しているような言葉は出てこない。
まあ、いきなり『愛してる』は行き過ぎたか。
さまざまな言葉を並べては消しを繰り返す変換予測調査に、気付けば二時間も費やしていた。
留実は根気よく作業を続け、メモに書きとどめたいくつかの完成した文章を眺めた。
『早く』『次の』『休みに』『ならないかな』『?』
『こないだの』『すごく』『よかったよ』
『オレだって』『すぐに』『行きたいけど』
『仕方ない』『じゃん』
過去、自分宛に送信されたメールを思い出す。
こんな内容の会話をしたことはないし、受け取った記憶はなかった。
――まさしく、これは女性宛に送った内容である。
稔矢の感情を伺えるような文章は一つも完成できなかったが、少なくとも好意がないわけではなさそうだというのはわかる。