メールチェッカー 【1】

しかし、稔矢はやはり同じ答えを口にした。


「それ、母親の名前なんだけど。

オレと苗字が違うのは、小さい頃離婚したせいだよ」




稔矢は母親について語り始めた。

幼い頃、離ればなれになって以来、ずっと連絡を取り続けていたこと。

携帯を持つようになって、メールという手段が出来てからさらにやりとりが増えて行ったこと。


母親はどうも稔矢を溺愛しているらしい。

本人はそうは言わなかったが、母親の行動を語る様子からそれは十分に見てとれた。


「母ちゃんも辛い中頑張ってるんだろうって思うと、ついついつき合ってやらないとなあって思うんだよね。

なんだかかわいそうでさ。

オレ、もうすぐ一人暮らししようと思ってるんだけど、もしかしたら母ちゃんと一緒に住むかもしれないんだ」




稔矢の母親のことを聞いたのは初めてだった。

一人っ子で実家住まいということは知っていたから、もしも結婚ということになれば、将来跡継ぎとなるんだろうなあということは漠然と考えていた。


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