メールチェッカー 【1】

「結構オレ、親孝行息子だろう?」


得意げに笑う稔矢。

だが留実は、首を縦に振ることができないままだ。




夕べ盗み見たメールの内容を思い出していた。

それは、二股をかけていると勘違いするほど、女の恋愛感情がまるわかりの文面だった。




『眠れないの。稔くんに腕枕して貰いたいな』

『こないだ稔くんが似合うって言ってくれた服、嬉しくて何度も着てるんだ』

『今度温泉行こうよ。露天に浸かりながら、おいしいお酒飲みたいね』

『世の中で稔くんが一番カッコイイよ!』




――同世代の女性だった方が、どれだけ気分が救われただろう。

反省してくれさえすれば、初犯の今回は許そうと思っていたからだ。


稔矢のことは本当に好きだ。

けれど、このメールの正体が母親だとわかった今、稔矢との将来に一気に黒い雲が広がったというのが本音だった。




もしも、結婚なんてしたら……稔矢を取られまいと必死に母親は敵意むき出しで近づいてくるだろう。

浮気相手ならいつか切れる可能性はある。

だが、母親という存在である以上、一生縁は続いてゆく。

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