かわいくないキミ
これも彼女の口癖だ。

なかなか内定が取れなかった彼女が就活の終盤、どうにかして就職するためについたウソ。
営業に向いていない性格のクセに、営業希望という嘘をついて面接を乗り切った彼女は幸か不幸か希望通りに営業部に配属された。

そこでの直属の上司が彼女の元彼、白石さんだ。
整っている顔立ちから社内では有数のモテ男で、白石さんを狙ってる女子社員は多かった。

そして、彼女のその一人だった。


営業部に配属されて1年。

この居酒屋でそう打ち明けられた。

「白石さんに惚れたかも」

今も鮮明に思い出せる彼女の恋する表情。
あの時の頬を赤らめた彼女の顔を俺は一生忘れることができないんだろう。

その日から彼女が白石さんと付き合うまでの1年半、俺は散々彼女の恋心を聞かされた。
白石さんのここがかっこいいとか、優しいとか、素敵とか。
聞き飽きるくらい、聞かされた。
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